4-2 第一軸:MTP生成パターン(S/B軸)
遺伝的基盤
S/B軸はミトコンドリアDNA(mtDNA)上の遺伝情報によって決定される。mtDNAは卵子を通じてのみ伝わるため、この軸は完全な母系遺伝に従う。
分子機構の核心はUCP(脱共役タンパク質)の活性差にある。UCPはアイテロミトスの内膜に埋め込まれたタンパク質で、メソ圧勾配の「漏れ」を調整する弁のような役割を果たす。
| S型(Stable:安定型) | B型(Burst:瞬発型) | |
|---|---|---|
| UCP活性 | 低い(弁をほぼ閉じている) | 高い(弁が大きく開く) |
| MTP合成 | 緩やかで持続的 | 爆発的で短時間 |
| 燃料消費 | 効率重視 | 速度重視 |
| 比喩 | 長距離ランナー | スプリンター |
身体的・行動的特徴
S型の特徴
長時間にわたって安定したMTPを供給し続ける。術を「燃やし続ける」ことに優れており、持続型の身体強化や長時間の結界維持を得意とする。消耗が緩やかである反面、瞬間的なピーク出力はB型に劣る。
心拍変動(HRV)が高く安定しており、負荷後の皮膚温変化が緩やかな曲線を描く。
B型の特徴
一瞬にして大量のMTPを生成し、すぐに枯渇する。この「爆発と沈静」のサイクルが特徴で、短時間の高出力魔法や瞬間的な身体強化に適している。連続使用には十分な休息が必要。
負荷時にHRVが急低下し、皮膚温が急峻なスパイク状変化を示す。
社会的・文化的影響
S/B軸が母系遺伝であるという事実は、アルセア社会に特有の文化的影響をもたらした。
「名家の魔術特性は、母親の血で決まる」
これは単なる俗説ではなく、分子生物学的な事実である。そのため:
- 貴族の婚姻政策において母方の系統が重視される
- 父とタイプが異なる子どもが「血を引いていない」と誤解されるケースがある
- 「母系の血筋」を重んじる文化圏では、この軸が社会的地位と結びつく
