1-2. 「生存条件」としての適合
1-2. 「生存条件」としての適合
アイテロミトスについて語るとき、まず知っておかなければならない事実がある。
アイテロミトス適合とは、「魔法を使えるようになる」技術ではない。 「惑星アルセアで生きられるようになる」技術だ。
惑星アルセアの大気にはトリフォスが拡散している。このトリフォスは、未適合者のミトコンドリアに対して致命的な毒として機能する。
【未適合者の場合】
環境中のトリフォス
↓ 細胞膜を透過
ミトコンドリアのATP合成酵素に結合
↓ 競合阻害
ATP合成が停止
↓
細胞エネルギー不足
↓
呼吸筋・心筋の機能不全
↓
呼吸停止・心停止
結果:死
窓の外に広がる空は美しい。風も吹いている。酸素も十分にある。しかし、適合処置を受けていない人間がそこに踏み出せば、数分で呼吸が止まる。
アイテロミトス適合が完了して初めて、人は惑星アルセアの地表に立つことができる。魔法は、その「副産物」として付随する。
【適合者の場合】
環境中のトリフォス
↓ 細胞膜を透過
アイテロミトスのトリフォス受容体が先に捕捉
↓ ミトコンドリアへの到達を遮断
AN(アイテル・ヌクレウス)で代謝
↓
MTP(Mesorine Triphosphate)生成
↓
解毒 + エネルギー獲得
結果:生存 + 魔法能力
これが、アルセア開拓史における最初の、そして最大の技術的難関だった。
